パワーハラスメントの防止

1 パワハラとは

同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。
厚生労働省の調査によると、過去3年間にパワハラを受けたことがあると回答した者は回答者全体の32.5%にのぼり、労働局への相談件数は平成24 年以降トップとなっております。
令和2年1月15日、厚生労働省から「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(厚生労働省告示第5号)が告示されました。

 

2 6種類の典型的なパワハラ行為

 

⑴ 身体的な攻撃
・ 暴行や傷害
⑵ 精神的な攻撃
・ 脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言
・ 特定の従業員に対する叱責メールを職場の他の従業員にも一斉送信
・ うつ病みたいな辛気臭いやつはいらんとの発言
⑶ 人間関係からの切り離し
・ 業務場所の物理的な隔離
・ 仲間外し
・ 無視
⑷ 過大な要求
・ 達成することがおよそ不可能なノルマを課すこと
・ 業務上明らかに不要なことや仕事を妨害すること
⑸ 過小な要求
・ 能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること
(解雇回避の観点から業務上の合理性が認められるような場合は含まれない)
⑹ 個の侵害
私的な交際等に干渉すること(従業員同士の交際に口をはさむことなど)

 

3 業務上の指導とパワハラとの境界

 

指導対象者が受ける個人の自由意思に対する侵害の程度(心理的負担の程度)を勘案して、上司の指導監督権の逸脱や裁量権濫用に至っていると評価できる場合には、パワハラにあたり不法行為となります。指導者の言動、業務との関連性、行為者の意図、指導対象者の地位、指導を受ける必要性、指導に対する姿勢、指導の行われる環境などが判断材料となります。

 

4 加害者の責任

 

加害者の従業員は刑事上の責任、民事上の責任を負います。会社は使用者として損害賠償責任(民法715条)を負います。

 

5 具体的な裁判例

 

⑴ JR 西日本吹田工場事件(大阪高判H15.3.27)
JR 西日本の吹田工場に勤務する作業員が、同工場の総務課長に腕を掴まれ、擦過傷を負わされたという事案

違法
暴行の程度が軽微であり、加えて業務上の必要性があるとしても、身体的な攻撃をともなう行為は原則としてパワハラにあたる。

 

⑵ A保険会社事件(東京高判H17.4.20)
上司が部下に対して「意欲がない。やる気がないなら会社を辞めるべきだと思います」などと記載された電子メールを部下とその職場の同僚に一斉送信した事案

違法(認容額5万円)
部下の名誉感情をいたずらに毀損するものであることは明らかであり、送信目的が正当であったとしても、その表現において許容限度を超え、著しく相当性を欠く。

⑶ ヴィナリウス事件(東京地判H21.1.16)
うつ病を罹患している従業員に対し、上司である部長が「うつ病みたいな辛気臭いやつはうちの会社にはいらん。会社にどれだけ迷惑をかけているのかわかっているのか」などと30分くらいにわたり罵声を浴びせたところ、当該従業員は自殺未遂を図った事案

違法(認容額80万円)
うつ病に罹患していることを攻撃するような言動は、業務上の必要性が全く認められず、また、この発言を引き金として自殺行為に及んでいるのであり、パワーハラスメントとしてはかなり悪質である。

 

⑷ 過小な要求(神戸地判H6.11.4)
転勤に応じなかった女性従業員Xに対し「今日から仕事はすべて〇〇さんにやって貰う。貴方には僕が言ったことをやって貰う」と言い、他の男性従業員に対し「Xには仕事をもって行くな」と言って、Xから仕事を取り上げたという事案

違法(認容額60万円)
業務の指示をしない措置が、不法な動機に基づき、または相当な理由もなく、雇用関係の継続に疑問を差し挟ませる程度に長期にわたる場合等、信義則に照らし合理的裁量を逸脱したものと認められる場合は違法性を帯びる。

 

6 事前予防

 

パワハラについては、それが事前に予防されることが最善であり、従業員に対する日常的な研修、相談窓口の設置といった措置は必要不可欠です。
当事務所は、従業員へのパワハラ研修等も実施しております。内部研修に限界を感じている経営者様はお気軽にご相談ください。

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