団体交渉の流れ・進め方について労務に強い弁護士が解説

1 団体交渉の進め方と進めるうえでの注意点

団体交渉は何の前兆もなく突然に申し入れられ、経営者の方々にとって晴天の霹靂となることが多いようです。ある日突然、名前も知らない組合から加入通知書、団体交渉申入書、要求書の3点セットが送られてきて、団体交渉への対応を迫られることとなります。

そして、団体交渉についての基本的な知識がないままに団体交渉への対応を迫られた結果、会社にとって不利な条件をのまされているケースもよく見受けられます。少々高額な解決金を支払うことになってしまったという程度であれば、会社にとってのダメージはさほど大きくないのかもしれませんが、不当な街宣活動やビラ配りなどをされて誹謗中傷に晒された場合には企業のイメージが悪くなるなどその被害は甚大なものとなることがあります。

以下においては、組合から団体交渉を申し入れられた時の準備事項や経営者の方々がハマりやすい失敗例について時系列に沿ってご説明いたします。

 

2 申入れ後の初動対応

ア 組合の情報収集

最近の組合はホームページを持っていることが多いので、まずは加入通知書や申入書に記載された組合名をインターネットで検索してみると良いでしょう。ホームページには組合の活動報告などが掲載されていることもあり、組合がこれまでに関わった事件や活動方針を知ることができます。そして、活動報告のなかに、代表者の自宅へ行って抗議文を差し入れた、ビラ配りを行った等の記載がある場合には、同じことを行ってくることが予測されるため、注意深く対応する必要があります。

また、ホームページのリンク先から当該組合が所属する上部団体を特定することができ、上部団体の性質から組合の活動方針を推測することもできます。

イ 加入組合員の確認

加入通知書には加入組合員の名前が記載されているので、その加入組合員が既に会社を退職した者であるのか、在職中の者であるのか、または、会社が最近解雇した者であるのかを確認します。

既に退職した者である場合は、在職中の残業代などが争点となることが多いため、比較的早期に解決できる傾向にあります。もっとも、在職中の者である場合は、給与賞与のアップや職場環境の改善等が争点となることが予測されるため、一般的に長期化する傾向にあります。また、加入組合員が最近解雇した者である場合は、解雇の無効を主張して復職を希望してくるケースもありますので、裁判所の手続等も視野に入れた対応が必要となります。

ウ 専門家(弁護士)への相談・依頼

組合は、労働問題を数多く扱っており、労働関係法に関する知識もかなり豊富です。このような組合に経営者一人で対抗することは不可能といっても過言ではありません。仮に、一人で団体交渉に臨んだ場合、労働関係法に関する失言の揚げ足を取られ、不利な条件をのまされてしまうこともあります。

団体交渉に臨むうえでは、労働関係法に関する知識、団体交渉に関する知識が必須のものとなりますので、早い段階で専門家に相談し、場合によっては団体交渉への対応を依頼することが重要です。

エ 初動対応での主な失敗例

① 組合からの申入れを無視、又は、時間稼ぎに終始すること

加入組合員の言い分がまったく理由のないものだと勝手に判断して組合の申入れを無視してしまう経営者の方がいらっしゃいます。

もっとも、労働者が組合に加入して会社に対して団体交渉を求めることは憲法上認められた権利です。そして、労働組合法第7条では使用者は正当な理由なくして団体交渉を拒否できないと規定されています。また、誠意を持って団体交渉に当たったとは認められない場合も団体交渉の拒否と同じように不当労働行為となると考えられています。のらりくらりと時間稼ぎばかりをしていると不当労働行為となる可能性があるのです。

団体交渉の申入れを無視したり、時間稼ぎに終始するとそのこと自体が不当労働行為に該当するため、労働委員会に救済命令を申し立てられることがあります。また、組合によっては活動が過激になる傾向もあります。

会社としては加入組合員の言い分に不満がある場合であっても、団体交渉を実施する方向で対応するのが正解です。団体交渉に応じると不利な条件を一方的にのまされると考えている経営者の方もいらっしゃいますが、決してそのようなことはありません。団体交渉という場であっても組合の不当かつ過大な要求については正々堂々と反論することは可能です。

② 在職中の加入組合員を不利に扱うこと

労働者が組合に加入したことをもって職場において不利に扱うことは不当労働行為に該当します。

目にかけていた社員や問題社員が組合に加入した場合、経営者は当該従業員に対して悪感情を持つことが多く、他の従業員より不利に扱ったり、職場で孤立させるような言動を取ってしまうことがありますが、これは組合につけ入る隙を与えるだけですので厳に慎むべきです。

③ 組合の要求に安易に応じてしまうこと

労働組合という今まであまり接点のなかった組織の文書を受けて、過度に恐れてしまい、組合の過大な要求に安易に応じてしまう経営者がいらっしゃいます。

もっとも、労働法に違反するような会社の運用については是正すべきであることはその通りですが、組合の要求のすべてが法的に正しいということは滅多にありません。会社に落ち度のある部分と正当性のある部分をしっかりと峻別したうえで、組合の要求を検討する必要があります。

3 団体交渉の日時・場所調整

ア 開催日時

団体交渉申入書には、大抵の場合、組合が希望する初回の団体交渉の候補日が記載されています。そして、この候補日はかなり近接した日時に設定されているケースが殆どです。

もっとも、これに応じる必要はありません。提案された候補日の都合が悪い場合は、組合に対して他の日程での再調整を申し出ても何ら問題はありません。

また、先程ご説明したとおり、団体交渉に際しては十分な準備が重要であるため、その準備期間として2週間程度の時間を求めることもまったく問題ありません。組合は再度の日程調整に対して良い顔をしないことが多いですが、準備不足のままで団体交渉に臨むことだけは避けるべきです。

次に、団体交渉の開始時間と終了時間についてですが、開始時間は就業時間内ではなく、加入組合員の終業時間以降に設定すべきです。就業時間内で実施する場合、仕事をしていないにもかかわらず、給与を支払う必要が発生するケースもあります。終了時間については、一回の団体交渉は2時間以内と設定し、明確に何時までと決めておくことが重要です。組合の交渉戦術としてなかなか団体交渉を終了させてくれないこともありますので、終了時間については必ず明確にしておく必要があります。

イ 開催場所

組合は、団体交渉申入書において、加入組合員の働く会社や組合事務所を団体交渉の場所として指定してくることがあります。

もっとも、これについても開催日時と同じく、応じる必要はありません。会社や組合事務所で実施する場合、なかなか団体交渉を終了させてくれない場合がありますので、できる限り避けるべきです。加入組合員の所在等も考慮してあげる必要はありますが、使用時間に制限のある外部の会議室等で実施することが良いでしょう。

ウ 日時・場所調整での主な失敗例

団体交渉の開催場所を組合事務所とすることは絶対に避けるべきです。組合によっては、交渉戦術として大声で威圧的な発言を行ってくる場合もありますが、組合事務所というアウェイでそのような状況となった場合、組合側の要求に抵抗するのは至難の業と言えるでしょう。

4 団体交渉当日に向けた事前準備

ア 会社側の出席者の決定

組合は会社の代表者の出席を求めてくることが殆どですが、代表者が団体交渉に出席する必要性は必ずしもありません。

ただ、交渉する労働条件等についての決定権限のない人だけが出席することは不誠実な団体交渉となり、不当労働行為となる可能性があります。

会社の代表者が出席しない場合は、代表者から団体交渉への対応を一任され、交渉する労働条件等について代表者と同程度の権限を有する人が出席する必要があります。具体的には、取締役や人事部などの部長職に就いている人の出席が妥当です。

また、出席する人が決定したら団体交渉の場での発言者を決めておくことも重要です。団体交渉における争点が複数ある場合などは、争点毎に発言者を決定しておくことも有用な方法です。

イ 要求書への回答

組合から送られてきた要求書については、出来れば当日までに書面で回答を準備しておくべきです。団体交渉の場において口頭で回答しようとしても、その真意が正確に伝わらない可能性があるほか、組合側に発言を制止されるなどしてそもそも回答ができないこともあり得ます。

ウ 想定問答の準備

組合の要求書を見れば、団体交渉での問答をある程度予測することが可能です。特に、会社に法律違反の落ち度がある部分などは組合に突っ込まれることが強く想像されますので、それに対する回答を準備しておくことは極めて重要です。

エ 事前準備での主な失敗例

会社内に複数の組合員が存在するような場合、会社の役員間の団体交渉に関するやり取りの内容が組合に筒抜けとなってしまっているケースがあります。団体交渉の事前準備については社内であってもその内容が漏れないように細心の注意を払って進めるべきです。

5 団体交渉当日

ア 録音

団体交渉の現場においては、組合側から録音させてもらうとの申し出があることが多いですが、会社側もICレコーダー等を準備して、団体交渉の録音を行ったほうが良いでしょう。組合との団体交渉後の交渉において「あの時認めたではないか」などという「言った言わぬ」の押し問答を避けることが目的です。

なお、録音に際しては、組合に対して録音することを一言ことわっておくほうがベターです。

イ 団体交渉に臨む姿勢

団体交渉はあくまで労使間の交渉事であり、会社が労働者の言い分を一方的に認めなければならないというものではありません。

組合によっては威圧的な発言を行ってくるケースもありますが、「相手の発言にひるまない」「安易な約束はしない」の精神で粘り強く交渉することが大切です。

ウ 書面へのサイン

組合によっては、会社にサインしてほしい協定書や合意書などの書面を事前に準備していて、団体交渉の場において会社側にサインを求めてくることがあります。

ただ、その場で初めて見せられた書面にサインする義務などありませんので、その場では持ち帰って検討すると回答すれば十分です。間違っても団体交渉の場から早く開放されたいという気持ちで書面にサインすべきではありません。

6 団体交渉終了後

ア 議事録へのサイン

組合によっては、団体交渉が開催される度に、事後にその議事録へのサインを求めてくる場合があります。

だた、この議事録についても、協定書や合意書と同じように会社にとって不利な内容となっていることがありますので、安易にサインすべきではありません。

サインする場合は内容をよく精査したうえで行うべきであり、仮に修正すべき点がある場合はその旨を組合に申し出るべきです。

 

当事務所の強みは一にも二にも団交経験の豊富さにあります。

十数年前までは団交に積極的に出席する弁護士は見当たらず、経験豊富な弁護士であっても生の団交を経験している者は非常に少ない状況でした。昨今は団体交渉への対応をサービスとして提供する法律事務所も増えておりますが、当事務所はそのような他の法律事務所が団交に取り組む以前から積極的に団交に出席し、そのノウハウを培って参りました。

当事務所の現在の年50回〜60回という団交実績は右に出る法律事務所はいないものと自負しており、その豊富な団交経験から労働組合の性質等も考慮した具体的な団交戦略をご提案させていただくことが可能となっております。当事務所は労働組合対策でお悩みの企業様のお力に必ずなれると思いますので、自分で労働組合に対応される前に是非一度ご相談ください。

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