解雇をする際の注意点

1 一般的な注意点

①個別の法令による解雇制限にあたっていないか②就業規則・労働協約による制限がないか③解雇権の行使が有効であるかの3点を検討する必要があります。

 

① 個別法令による制限

以下にあたる場合は、原則として解雇は不可となります。
・業務上の傷病による休業期間及びその後30日間(労基法第19条)
・産前産後の休業期間及びその後30日間(労基法第19条)
・国籍・信条・社会的身分を理由とする解雇(労基法第3条)
・労働組合の組合員であることを理由とする解雇(労組法第7条)
・性別を理由とする解雇(均等法第6条)
・労働基準監督署等行政機関へ内部告発したことを理由とする解雇(労基法第104条、労働安全衛生法97条)
・女性従業員が結婚、妊娠、出産したこと等を理由とする解雇(均等法第8条)
・育児休業を申出、あるいは取得したことを理由とする解雇(育児・介護休業法第10条)
・介護休業を申出、あるいは取得したことを理由とする解雇(育児・介護休業法第16条)
・公益通報を理由とする解雇(公益通報者保護法第3条)
など

 

② 就業規則・労働規約による制限

平成15年労基法の改正により解雇事由の定めは就業規則の絶対的必要記載事項になったことから、就業規則の解雇事由は限定列挙と考えられています。
よって、問題社員の非違行為が就業規則の解雇事由に該当しなければ特段の事情がない限り解雇はできません。

 

③ 解雇権濫用(労契法第16条)による制限

解雇が有効であるためには、客観的に合理的な理由があり、かつ、社会通念上相当であることが必要となります。
解雇権の行使が濫用と評価される場合は、解雇が無効となります。

 

 

2 手続的な注意点

① 解雇予告の履行

解雇予告は、少なくとも解雇の30日前に行わなければなりません(労基法第21条)。

30日前までに解雇予告をしなかった場合は、30日以上の平均賃金を支払うか、予告してから30日が経過するまで解雇は成立しません。

 

この解雇予告は、法律上は文書でも口頭でも構わないとされていますが、通知の有無や紛争に発展した場合を考慮し、内容証明郵便で通知しておくべきです。

 

② 解雇理由証明書の交付

労働者が、当該解雇の理由について証明書を請求した場合には、使用者は遅滞なくこれを交付しなければなりません(労基法第22条)。

 

証明書における解雇理由は、具体的に示す必要があり、就業規則の一定条項に該当することを理由として解雇した場合には、当該条項の内容やその条項を適用するに至った事実関係を記入しなければなりません。