パワー・ハラスメント(パワハラ)の定義
パワー・ハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。
行為類型としては、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)などがあります。
裁判における違法性の判断基準
パワー・ハラスメントをした者とされた者の人間関係、当該行為の動機・目的、時間・場所、態様等を考慮の上、企業組織もしくは職務上の指揮命令関係にある上司が、職務を遂行する過程において、部下に対して、職務上の地位・権限を逸脱・濫用し、社会通念に照らし客観的な見地からみて、通常人が許容しうる範囲を著しく超えるような有形・無形の圧力を加える行為をしたと評価される場合に限り、被害者の人格権を侵害するものとして民法第709条の不法行為を構成するものと考えられています。
従業員からパワー・ハラスメント被害の申告があった場合
① 申告内容について事実の調査
調査の際には誰からどのような順番で聞き取りを行うかなどに十分に配慮すべきです
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②当該パワハラの停止・職場環境の改善
申告者の配転等
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③加害者に対する厳しい指導や懲戒処分の実施
従業員から使用者としての責任を追及された場合
パワー・ハラスメントが従業員のものであり、使用者自身の行為と評価できない場合であっても、使用者は民法第715条により使用者責任を負うので、損害賠償に応じなければならないことがあります。
また、使用者は労働契約上の附随義務として安全配慮義務を負っていると解されており、その義務の不履行として損害賠償の責任を負うこともあります。
裁判になってしまったケースなどは、使用者としては、①事実の有無、②法的評価(不法行為か)、③因果関係、④損害額について争うことになります。