労働審判は、「事業者と個々の労働者」との間の労働契約上の権利義務に関する紛争を対象としています。
具体的にいうと、解雇・雇止め事件や賃金支払請求事件、残業代請求事件、懲戒処分を巡る紛争、パワハラ・セクハラなどの事件が労働審判の対象となります。
事業者と労働組合の間の集団的労使紛争は解決機関として労働委員会が用意されていますので労働審判の対象外とされています。
また、労働関係の紛争ではない個々の労働者と企業との間の貸金返還請求なども対象にはなりません。賃金引上げや労働時間の要求など将来の労働条件の形成に関わる利益紛争も労働審判の対象とはなりません。さらに、公務員については、国家公務員法や地方公務員法において規律されておりますので、労働審判の対象外とされています。
次に、労働審判は、労働者の生活をかけた紛争であることから、原則として「3回以内の期日」という短期間で審理を終結することが予定されています。短期間の審理という制約がありますので、一般的に複雑な事件は対象として適していないとされています。例えば、解雇の法的効力が激しく争われている事件などは労働審判に適さないといわれています。
なお、派遣労働者と派遣先事業主との間の紛争については、派遣先事業者も労働契約上の一定の義務を負う場合があり、その義務に関する紛争は労働審判の対象となり得ると考えられます。
以上のとおり、労働審判を利用できるかどうか、また、当該紛争が労働審判に適しているかどうかを判断するのは簡単なものではありません。当事務所は労働審判も数多く手掛けておりますので、お気軽にご相談ください。