被災をした労働者またはその遺族から使用者に対して安全配慮義務違反があることを理由として損害賠償請求が行われることがあります。
使用者が負う安全配慮義務とはこれまでの判例によって形成されてきたものであり、その内容は様々ですが具体的としては以下のようなものがあります。
① 物的・環境的危険防止義務
これは安全配慮義務の中でも典型的な義務であり、作業場の危険を防止する義務です。使用者は作業施設や機械等の安全性に配慮し、作業環境の改善に努めることが求められます。
② 作業内容上の危険防止義務
危険な作業時の事前の安全教育や安全確保のための監視監督・注意の実施などの注意義務です。
③ 作業行動上の危険防止義務
作業員間の連絡・調整をとらせて作業の安全を確保する義務です。
④ 寮・宿泊施設の管理義務
寮生活等の際に使用者が適切な対応を取るべき義務です。
⑤ 健康管理義務
使用者が労働者の健康管理も配慮すべきとする義務です。
労働者から安全配慮義務違反を主張された場合の使用者の対応
① 安全配慮義務の具体的内容について
労働者から主張される安全配慮義務の内容が、職場の規模・環境、労働者の経験等に照らして妥当なものであるかを吟味し、不合理に広範となっていたり抽象的であったりする場合には、使用者の方から自らが負うべき安全配慮義務の具体的内容について積極的に反論することが必要となります。
② 相当因果関係の有無について
また、労働者が主張する損害と使用者の安全配慮義務違反との間に相当因果関係があるか否かを検討し、特に発生の機序がはっきりしない損害や拡大した損害については相当因果関係の有無を争う必要があります。
③ 過失相殺について
さらに、使用者に損害賠償責任が認められる場合であっても、過失相殺を求めて労働者の過失を主張していくことになります。
労働安全衛生法との関係
安衛法に定める使用者の義務は使用者の労働者に対する安全配慮義務の基準となります。一方で、使用者においては安衛法所定の措置さえ講じていれば全ての安全配慮義務を尽くしたことにならないことにも留意が必要です。