1 内定について
内定とは法律的にどのような意味を持つのでしょうか。
この点、裁判所は、”企業による募集は労働契約申込みの誘引であり、これに対する応募または採用試験の受験は労働者による契約の申込みである。そして、使用者からの内定通知の発信が契約の承諾にあたり、これによって労働契約(始期付解約権留保付)が成立する”と考えています。
つまり、この裁判所の考え方に従うと、内定通知があった時点において、条件付きではあるものの、労働契約が成立していることになります。
2 内定取消しの適法性について
使用者が留保した解約権の行使が適法であるのか問題となりますが、裁判所は「解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」と限定的に考えています。
例えば、使用者が求めた提出書類への虚偽記載があったとしても、その一事だけをもって解約権の行使が適法となるわけではなく、虚偽記入の内容や程度が重大なものであることが必要となります。
3 内定取消しと損害賠償請求について
使用者による理由のない内定取消しについては、債務不履行または不法行為に基づく損害賠償請求が認められる可能性があります。
使用者としては、内定の取消しを行う場合は、慎重にその適法性を検討する必要があります。
4 内内定について
既に説明していますように、内定は労働契約の成立であり、それ以降は企業と応募者の双方に拘束力が発生します。もっとも、内内定はそれ以前の問題であり、労働契約はいまだ成立していないので、原則として、内内定を取り消しても解雇ということにはなりません。
もっとも、内内定の状態といっても、内内定者の期待が法的保護に値する程度に高まっていた場合には、その期待利益の侵害を根拠に不法行為に基づく損害賠償請求が認められる可能性がありますので注意が必要です。